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周産期医療機関の勤務実態について [徒然]


先日、オンラインで情報を得ているところから、「都内の周産期医療機関を労基署が一斉調査か」という内容のメールが入っていました。
ご承知のように昨年から周産期を迎えた妊婦さんが、夜間あるいは休日に産気づいて救急車で搬送されるも、受け入れの病院がなくて亡くなられるケースや病院をたらい回しにされるケースが多く見られるようになりました。

これら事案の発生原因を「改正された研修医制度による医師の大学病院離れ」とする論調が主流と思われます。大学病院離れによって今まで大学病院から派遣されていた拠点病院の医師を、大学病院の医師不足を解消するために急遽大学病院に呼び戻すことの結果として、拠点病院での医師不足が顕在化したのだと。
また、一方では医療行為の結果患者に後遺症として障害が残ったり亡くなったりした場合、患者の家族あるいは遺族から刑事告訴され、刑事事件として訴追されるケースが目立っています。その最たるものが今回の「産科婦人科」や「小児科」であると指摘されています。
日本でもアメリカの影響を受けるように、「訴訟」が一般的な行為として認知されるようになっています。
その結果、「産科婦人科」「小児科」を専攻する医師が、極端に減ってきているのです。また、少子化もその原因の一つとして挙げられています。少子化によってお産の件数が減少すれば、「産科婦人科」「小児科」に掛かる患者数は減少し、経営的にも厳しくなると考えられます。

このような様々な要因が絡み合って、冒頭に書いたように妊婦を巡る事件が多発しているのです。

そしてもう一つ大きな問題があります。
それが今回の労基署の調査の背景にある問題です。

上述した「研修医制度の改正により拠点病院から大学病院への医師の還流」および「医療訴訟によるリスク回避のため、あるいは将来的な安定経営に鑑み産科婦人科・小児科を専攻する医師の減少」という二つの原因により、拠点病院の産科婦人科・小児科では医師の絶対数が不足し、診療を止めるところややめない場合は在籍している医師に極端な労働負荷が掛かるようになったのです。

この在籍している医師に極端な労働負荷という現状が、労基署の調査が入るきっかけとなっています。過重労働による慢性的な労働基準法違反があるということです。
医師不足によって当直回数も多くなり、当直でも仮眠も取れず救急患者の対応をすることで、24時間連続勤務は当たり前、36時間連続勤務も珍しくない状況に陥っています。
この激務がまた医療行為のミスを誘発しているとの指摘もあります。

私が大学生だった昭和50年代前半、法学部法律学科で労働法(労組法・基準法・労調法など)を専攻していましたが、扱っていた事案の多くが公務員の労働3権を巡るものでした。国鉄の労働者で組織されていた「国労」あるいは「動労」によるストライキ・順法闘争、郵便局職員で構成されていた「全逓」による勤務時間内のビラ配りや腕章を付けての勤務、これらの行為を労働者の基本的権利として是認すべきか否か・・・多くの判例研究と理論の検証に明け暮れていた4年間でした。
そのなかで医師を巡る労働法関連の案件は、記憶にありませんでした。(大きな典型的な事案中心の勉強であったので、実際には存在していたかも知れません)


今回の労基署による調査は、 愛育病院(東京都港区)に続き、日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)
なども対象となり、労働基準監督署から是正勧告を受けていることが明らかになりました。周産期医療を担う都内の医療機関に対し、労基署が一斉に立ち入り調査を行ったようです。
確かに基準法違反は事実でしょう。でも、その背景にメスを入れることなしに、杓子定規に労基法違反に対する是正勧告を出してみたところで、実質的な問題解決には至らないと私は思います。
これらの問題の管轄省庁は、厚労省です。
労働部門と医療部門が相互に連携することなしの「縦割り行政」の典型的な事例です。

労基署による調査が全国的に行われ、杓子定規な運用で是正勧告が相次いで出されると、どのような問題が生ずるでしょうか。
労働関連法規を遵守するのは当然ですが、その点だけに焦点を当ててその背景に対してどうすべきかが考えられないと、多くの医療現場では混乱が生ずると推察できます。

今後の動向を注意深く見ていく必要があると思います。 

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